6月23日。津山へ。

Filed under: General,Travel / 7月 3, 2011



6月23日、もんじゅの部品引き抜き作業決行の知らせを聞き、作業失敗の可能性が高いと感じた私はミスタータナカを誘い西国への逃亡を図りました。
事前の風向き予測では西風とのことで万一のことがあっても神戸への影響は少ないと予想されましたが、折からの福島での原発事故の件を受け、自身が行動出来る事を示すためにも事前にレンタカーをチャータし、朝から出発いたしました。
「もう二度とこの街に帰ってはこられまい」我々は故郷を捨てる覚悟でその日を迎えたのです。
北神戸線を経て中国道へ、中国道を西へ走りともあれ津山まで。津山にて待機。ニュースを注視しつつ「すわ」という事態になれば一気に300km圏外である広島まで、そして風向きを見てさらに徳山〜宇佐〜宮崎〜鹿児島へと逃れる手筈でありました。

サーボスエリアで昼食を済ませ、夕方前に津山入り。
エリア最強の珍スポットとの呼び声も高い「つやま 自然のふしぎ館」を見学いたしました。
かねてからミスタータナカから話は聞いていたのですが、これはなかなかのスポットでしょうな!
あるわあるわ。化石、昆虫、鉱石、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類、そして人間…年代を問わず生きとし生けるものの標本という標本がズラズラずらり。
虎、ライオンは言わずもがな。キリン、ゾウアザラシ、シロクマ等の大型のものからリスや雀のような小型のものまで。各地域別に分けられ、無数に展示される恒温動物の剥製の大群!
ノアの方舟の中もこんな感じだったのでしょうか?自然のふしぎ館は皆死んでるからまだよいものの、これが全部生きていたとしたらさぞかし大変だった事でしょう。
閉館時間が迫ってきた事もありやや駆け足気味に館内を一周。いわゆる珍スポット特有の過剰な感覚を堪能。

館のすぐ隣にある津山城も見学いたしました。
壮大な石垣や大きな石の階段が巨人の家かと思わせるようなスケール。
本丸があったとされる頂上まで登って津山の街を一望し、ミスタータナカは「もし神戸が放射能にやられたらここに仮設住宅を建築し骨を埋めても良い」とうそぶいてみせたのでした。

中国山地を渡る西風に笑われながら、あまりの居心地の良さに長居しましたが、津山三十人殺しで名高い所謂「八つ墓村」に赴くべく城趾を後にしました。
自然のふしぎ館の職員の方や城に併設されている観光案内所にて「八つ墓村はどこですか?」と道を尋ねるも皆さん一様に「あれは津山ではない」との説。
自然のふしぎ館の職員の方に至っては明らかに嘘ではないかという情報を我々に伝えたのでした。
やはり地元じゃ今だにタブー視されているのでしょうか?それともさほど有名ではないのか?
釈然とせぬ思いでハテナマークを頭蓋骨の内側に浮かべながらインターネットにて自力で検索。グーグルマップにて道程を確認。車を八つ墓村へと走らせたのでした。
しかしこのグーグルマップでの確認に大きな落とし穴が待っていました。
我々は西回りとでも言えるルートで目的地へと向かったのですが、これが思いのほかの難コースでありました。
「かくや!」と思わせる細道を往き、目的地は右折との標識を一旦越えて横野の瀧に寄り道。金玉石なる素晴らしい石を拝見。この時点で写真を撮るのにギリギリの明るさでありました。
来た道を急いで戻り標識の出ていたところからさらに「八つ墓村」を目指します。
しかしここからがまさに地獄でありました。とにかく道が細い。絶えず草木が車のボディを擦る。細いと言うにも細すぎる道。
もちろん電話は圏外。街灯も無い。道を踏み外したら一発でアウト。道を踏み外さなくても何かあったらもう行く事も戻る事も出来ない山道でありました。
どこで引き返そうかと迷い迷い前に進みましたが、これが案外と長く、延々と続き不安も頂点に達する頃、ポツンと立つお地蔵様。供えられた花は鮮やかに新しい…。
ギャア!と二人して声を上げたところでスッと車が尾根を越えました。
今までは鬱蒼とした森の茂みを進んできたのですが、一転してバーンと開けた大パノラマ。真っ暗闇になる寸前のうっすらとした明るさに透けて見える中国山地の山々と眼下にほの暗く浮かぶ集落。
「こ、こ、これやな」とミスタータナカと私は声を合わせて頷き合ったのです。後でわかった事ですが、この風景こそ犯人の都井睦雄が最期に見たものだったのです。
しかも今度はものすごい下り坂。道は左にカーブしており右側は一見下がわからないほどの崖。久々に「死ぬ」と思いました。ずるずるずるーっと車がすべってゆき、ごろごろごろーっと崖から車が落ちるシーンが我々のビジョンに鮮明に映りました。
私が車を降り徒歩にて道を確認。路上の砂や枝の類いを取り除き、慎重に下山しました。
この山のを下りてすぐの集落がやはり事件の舞台でありました。不謹慎ながらも抗い難く惹き付けられる性と死の事情。事件の背後に漂う濃厚な風情を思いつつゆっくりと車を流します。日が暮れていた事もあり、誰にも会う事はありませんでした。
後で高名な怪奇スポットハンターの小出さんにご指摘いただいたのですが、睦雄の墓もまだこの辺りにあるはずとのこと。
また訪れる機会を願いつつ、津山を後にしました。

カーラジオを聞いても一向にもんじゅのことは何も言わず。
巨大なストレスを感じ、インターネットにて情報をチェック。作業は深夜にずれ込んでいるとの事。
しかもミスタータナカが「11時から用事があるんです」とのふぬけた言説を繰り出しました。
「俺たちは故郷を捨てたんじゃないのか?」と原則論を語る私にミスタータナカは「一時帰宅です」と巧みなロジックで応酬。
「ものは言い様でんな」と釈然としない気持ちを抱えつつラーメンを食した後、帰神したのでした。

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